土地の売買と土壌汚染について


①工場・商業地を売る場合
現在土地の売買では、対象地に土壌汚染のおそれがないか過去にさかのぼり地歴調査を行うことが求められています。特に「工場跡地」「工場」などの土地の売買にあたっては、土壌汚染のリスクを認識することは、買主・売主の双方にとって必要不可欠であり、後々に問題が複雑化しないようにしっかりと前もって把握し、問題点を共有しておくべきものです。 ※工場を将来売却したいとお考えの工場主の方へ 直近ではないけれど、将来に工場の移転、事業の拡大・縮小等で工場を売却する場合は、現在所有する工場敷地について、土壌汚染の現状把握をされることをお勧めいたします。売却の決定後に汚染が発覚した場合は、対策できる方法は限られてしまうことになり、コスト面や対策期間面で割高になるなど制限がでてきます。 その意味でも、早めに調査を行い、土地の土壌汚染の現状把握をすることで、事業計画へ対策費用の組み込みや、時価会計による損金算入などが図られ、余裕を持った事業展開が可能になります。  まずは、可能性の把握として地歴の調査(フェーズⅠ調査)や簡易的な調査を行い、不安な物質、気になる部分だけでも調べてみるのも一つの手です。結果的に対策費用が最小限に抑えられることになります。

②宅地を売る場合
近年では、特に都心部において、土地の売却時に宅地でも買い手側から土壌汚染調査を要求されるケースが増加しています。不動産業者を仲介された場合、特に大手企業に至っては、どんな土地であっても、少なくとも地歴の調査(汚染の懸念がある土地については土壌の調査)をしたうえで買い取ることが一般的です。つまり、土壌汚染の可能性の有無あるいは大小を把握することによって、リスクの定量化をはかり、土地買取り額の算出根拠に組み入れようとするものです。 したがって、宅地だからといって土壌汚染の可能性を正しく把握せずに、リスクを認識しないでいると、売買がスムースに成立しないばかりか、後に思わぬ出費や損金が発生する場合があります。

③買い主から調査を要求される場合
買い取った土地に土壌汚染があった場合に、その除去費用が膨大になることがあり、土地の価値が大きく下落するリスクがあるため、特に、工場跡地等では、買主から売買の際に土壌汚染調査を要求されるケースが増えています。 売買の際に土壌汚染調査を要求されなくとも、土壌汚染を知らずに売買した場合には、隠れた瑕疵として契約解除もしくは損害賠償を買い手から請求されるリスクがあります。後になって訴訟問題に発展するケースも出てきています。土壌汚染の瑕疵担保責任についてきちんとリスク回避をして売買契約をする必要があります。

■土壌汚染とはどんなもの?■
土壌汚染対策法で定める特定有害物質は、揮発性有機化合物(第一種)・重金属等(第二種)・農薬等(第三種)に分類され、それ以外にも油汚染なども調査の要求事項で頻繁に挙げられます。

■私たちと土壌汚染対策法のかかわり■
土壌汚染対策法は次の3つのケースに該当する場合は、土壌汚染の調査を義務付けています。 l法律で定められた物質(特定有害物質として25物質が定められています)を製造・使用・処理していた施設を廃止する場合。 l一定規模(3,000㎡以上)の土地を形質変更する際に届けが必要となり、その土地に汚染の恐れがあると都道府県知事が認めた場合。 l土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると認める場合 の3つですが、現在は通常の土地取引の際、隠れた瑕疵による損害賠償回避のため(土壌汚染は土地取引時に確認する重要事項の一つです)自主的に行われる調査がもっとも多いです。調査を行って、汚染がない場合その土地は法に適合した土地と評価されます。しかし、汚染がある場合は法に準じて何らかの対策を講ずることが一般的です。ちなみに新潟県ではたとえ自主調査でも、汚染が発覚した場合は、条例により調査結果の報告が求められています。
なお、法律では特定有害物質として下表のとおり基準が決められており、基準を超過した場合は、下図のとおり「要措置区域」「形質変更時要届出区域」に分類されます。

※2017年4月より第一種特定有害物質クロロエチレンが追加されました